過去の自分を見ました.(備忘録)
マスクを外すのを渋る男の子
先日,企業の合同説明会に参加しました.その時の出来事が印象的で,私の人生を振り返るきっかけになったので備忘録を残します.
その合同説明会では,企業に渡す写真をその場でチェキで取る段とりになっていました.私はその列に並んでいました.
私の5人ほど前に並んでいた人が,なにか写真撮影で詰まっています.写真を撮る女性社員と話が盛り上がって止まっているときもあったので,またそれかと私はうんざりしてよくよく注目してみると,そうではないようです.
その彼は冬の就活生らしく,私服参加の合同説明会にベージュのコート,紺のマフラー,マスク,という出で立ちのやや背の低い男子学生でした.
女性社員と彼の押し問答はこんな調子でした.
「マスク取っていただけます?」
「いやそれはちょっと」
「でも企業さんに提出するので」
「なにか怪我でもなされているんですか?」
「いえ,そうではないんですが.」
「そうですか」
結局彼はマスクを外すことなくチェキを撮り,会場に入りました.
季節は冬,この時期に風邪を引くのは避けたいのかもしれませんし,顔に傷があるのかもしれません.
でも私には違う理由だとわかります.彼はマスクを外した自分を見られるのが嫌なのです.マスクを外した自分の顔よりマスクをした状態での自分に現実感,臨場感を感じていて,頭の中の自分がそのマスクをした自分こそが自分という状態になっています.
私はそれを後ろから眺めていました.恥ずかしさで目をそらす,話を聞かないようにイヤホンをするみたいなことはせず,ただ会話の行く末を案ずるでもなく眺めていました.
自分の中で過去を避けるでもなく,耳をふさぐでもなく見つめることができました.
これは私が乗り越えたということです.この期せずして訪れた印象的な機会を忘れないためにこの備忘録は残します.